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新規単結晶材料及び結晶成長技術の開発
超高融点単結晶の融液成長技術の開発
融液からの単結晶成長は、それぞれ白金、イリジウムの軟化点である1500℃、2000℃にそれぞれ境界点をもつ。特に高融点単結晶の作製に使用されるイ
リジウム坩堝の軟化点を超えてしまう2000℃超の高温領域に融点を持つ結晶材料は、これまで坩堝を用いた融液成長は不可能とされ、主にベルヌーイ法やス
カル法、Laser heated pedestal method (LHPG法)により作製されるのみで、高品質のバルク単結晶を得ることが大変難しいために、研究・実用化があまり進んでいない。しかし、高融点の単結晶
材料の中には、非常に魅力的な性質を持つものがあり、安定した育成技術の開発は、単結晶材料研究において欠かせない重要なテーマである。本研究グループでは、こ
の超高融点単結晶材料の融液成長技術の確立に挑戦する。 現在、特に、高出力レーザー用結晶である希土類セスキオキサイドと可視域RGBレーザー用結晶のスピネルという二種類の超高融点結晶の育成とその光学評価を行っている。スピネル構造を持つ材料は非常に興味深い電気的性質・磁性・光学特性を持っている。なかでもMgAl2O4というスピネルは、レーザー用母結晶として大変有利な性質、すなわち、硬い・化学的腐食に強い・電気的損失が少ないなどの特徴を持っている。このような特徴を持つスピネルに遷移金属イオン(Ti3+やMn2+)を微量ドープさせれば、3d-3d遷移や電荷遷移を利用した新しい固体レーザー用の材料として有望な単結晶の作製が可能である。本研究室が得意とするマイクロ引き下げ法を利用すれば、柱状に形状を制御したMgAl2O4:Ti3+の単結晶を作製することができ、また、育成速度も速い。現在までに、MgAl2O4:Ti3+単結晶の紫外線励起で強い青色の発光を確認している。 希土類元素を用いた固体レーザーとしてはNd:YAGに代表されるようなNdのf-f遷移を使ったものが代表的であるが、近年のInGaAsレーザーダイオード(LD)の開発により、980nm付近の励起が小型のLDで可能となったため、Ybの遷移を使ったレーザーも注目されている。分光的な観点から、 Yb3+はNd3+に比べて、1)2つの基準状態(2F7/2:基底状態、2F5/2:励起状態)のみの単純なエネルギーダイアグラムを有する、2)濃度消光があまりシビアでないため、ドープ量を高くすることが可能、3)アップコンバージョンがない など、いくつかの利点があり、Nd3+レーザーで起きていた濃度消光の効果や多重励起の影響を被らず、且つ、半導体LD励起を利用した装置の小型化が可能である。 しかしながら、Ybは室温において基底状態である2F7/2がしばしば占有されている。それを避けるために高結晶場を有する母結晶が必要とされる。希土類セスキオキサイドは、融点が2,400℃以上と高いが、高い結晶場と希土類サイトを持ち、YAGなどに比して有意に高い熱伝導率を持ち、且つ、実効フォノンエネルギーが低いという、大出力レーザー用に都合の良い性質を持っている。現在、本研究室では、希土類セスキオキサイド育成用に超高融点対応の坩堝を用意し、ホットゾーンも含めた超高融点物質用マイクロPDを開発し、Yb等をドープした結晶の育成・評価を行っている |
アップコンバージョンレーザー応用共添加フッ化物単結晶の開発
可視域に発光を持つPr, Er, Dy, Eu, Ho等の希土類のフッ化物は様々なフッ化物(CaF2,
KYF, GYF, LiYF, LiLuF等)と固溶体を作りやすいため、フッ化物単結晶材料は可視光レーザーへの応用に対しても大変魅力的な材料である。本研究室独自のマイクロ引き下げ法(μ-PD法)は、材料探索速度が非常に速く(Cz法やBG法などの従来の融液成長法と比較して、1〜2桁速い速度で結晶育成が可能)、レーザー応用に最適な希土類濃度を確定するのに非常に効果的な手法である。この手法をフッ化物の材料探索に応用することにより、フッ化物ホストと希土類の添加量の組み合わせを様々に変えた単結晶を幅広く育成し、最も優れた特性を持つフッ化物単結晶材料の探索を行っている。これまでに、DyやErをドープしたCaF2、KYF、LYF等を作製し、可視域発光を観測している。最近は、Yb,
Prの共添加に着目し、CaF2, KYF, LYFをホスト結晶として、赤外レーザーLD励起によりアップコンバージョンさせた可視光レーザーへの応用を目指している。 |
Web Page 管理者 KUROSAWA, Shunsuke (kurosawaアットマークimr.tohoku.ac.jp)