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ワイドギャップ半導体受光素子の開発
ワイドギャップ半導体とは
ワイドギャップ半導体とは、Si など従来よく利用されてきた半導体よりもバンドギャップの大きな半導体を指す。通常のシリコンは 1.1 eV 程度のバンドギャップを有するため、典型的には 2-3 eV 程度以上のバンドギャップと言えるであろう。例えば窒化ガリウムでは、バンドギャップは3.39 eV、炭化ケイ素では 2.20〜3.02 eV、ダイヤモンドでは 5.47 eV などもワイドギャップ半導体である。代表的な用途としては、窒化ガリウムが有名であるように、青色-紫外 LED など、発光デバイスとして利用されている。
昭和電工社の HP より、GaN 系 LED。
ワイドギャップ半導体受光素子
シンチレータを始めとした放射線検出器は、初段のシンチレータで放射線を可視から紫外域の光に変換し、これらの光を受光素子 (光電子増倍管、フォトダイオードなど) にて電気信号に変換する形式が取られる。これまでは主に光電子増倍管が用いられてきたが、近年では、軽薄短小、省電力、低コストなシリコン半導体受光素子に代替する研究が進んでいる。例えば、PET-MRI など近未来の医療装置においては、受光素子は磁場不感であることが求められるため、真空感型の素子を利用することは (学術レベルを除き) 極めて困難である。近年のシンチレータ開発の動向であるが、読み出し回路の高速化に伴い、高速発光するシンチレータ材料が求められてきている。シンチレータの高速化は原理的に可能であるが、高速化した場合、一般に発光波長が短波長化するという問題が生じる。発光波長が 400 nm 以下になってくると、従来のシリコン系受光素子の感度が急速に小さくなり、検出器としての性能の担保が難しくなる。そこで我々は、既述のワイドギャップ半導体を受光素子として用いることを企図し、その研究を行っている。
各種受光素子の量子効率。
ワイドギャップ半導体を発光素子としてみた場合は、世界中で開発競争が繰り広げられており、新規参入するのは甚だ困難である。しかしながら、発光素子が存在する以上、その発光を受光し、フィードバックして制御を行う受光素子も同じ分量だけ必要となる。そして受光素子としてみた場合、このような研究はほとんど行われていない。我々の研究グループでは、AlGaN 社などと協力する形で AlGaN 系半導体受光素子を、神戸製鋼所と協力することでダイヤモンド受光素子の研究を行っている。下図は、AlGaN 系受光素子 と我々の開発した Pr:LuAG シンチレータを融合させて放射線検出器とし、世界で初めて放射線応答の測定に成功した結果である。AlGaN 系受光素子 (左)、Pr:LuAG とアセンブリした際のエネルギースペクトル。
ダイヤモンド受光素子。